橋本榮治句集『瑜伽』
橋本さんは黒田杏子さんが急逝されるとは露思わず〈龍太亡き居間をつらぬく縅銃〉を詠んだに違いない。この句集『瑜伽』(ゆうが)の脱稿直後に杏子さんは、龍太が亡くなったとおなじ病院で急逝した。跋に杏子さんは「橋本榮治さんは私のもっとも信頼する友人のおひとり。その人が句友でもある事...
橋本さんは黒田杏子さんが急逝されるとは露思わず〈龍太亡き居間をつらぬく縅銃〉を詠んだに違いない。この句集『瑜伽』(ゆうが)の脱稿直後に杏子さんは、龍太が亡くなったとおなじ病院で急逝した。跋に杏子さんは「橋本榮治さんは私のもっとも信頼する友人のおひとり。その人が句友でもある事...
池田澄子さんは超有名な作家だから紹介するまでもない。前句集の第七句集『此処』の蛇笏賞は惜しかった。今回の句集『月に書く』は第八句集に当るのであろう。同じ朔出版、2023年6月7日発行。 自選と思われる12句は次の通り。 春寒き街を焼くとは人を焼く...
長谷川さんは「春月」(戸恒東人主宰)の重鎮で、「春月」のたくさんの賞を貰っておられる。その第三句集で、本阿弥書店、令和五年六月十四日発行。帯文は戸恒主宰。「耿人俳句の五十代の作品の宝石箱」だとある。表紙の国芳の猫の絵が面白い。 自選14句は次の通り。...
村(そん)蛙(え)さんが結社「山河」(山本敏倖代表)の主要メンバーで、2022年に山河賞をうけられたことぐらいしか、この句集からは窺えない。詩や小説をも志している表現者志向の方とお見受けするが、この句集、外見は多くの例に倣わず、極く薄く、質素・簡素である。だが、中身が新鮮。...
五十嵐さんは「藍生」と「雪華」の同人。帯には急逝された「藍生」黒田杏子主宰の序句 青嵐五十嵐秀彦屹立 が掲げられている。発行は、令和五年六月一日、山口亜希子氏の書肆アルス(装幀は間村俊一、挿画は田島ハルの各氏)が発行。 氏は北海道で大活躍の俳人であられ、雪華俳句賞、藍生大賞...
荒井さんは平成三年に「沖」に入会し、平成十二年には朝日俳句新人賞を受け、二十一年には「沖」賞、さらに翌年は長崎県文学賞を受賞されておられる。経歴からは「沖」(能村研三主宰)一筋の方のようである。俳人協会の幹事でもある。その第四句集で、令和五年六月一日、朔出版発行。...
以前利用させて戴いていたブログの運営会社が都合で業務を停止した。それで小生の既掲載案件が全部消されてしまった。友人から、幾つかのブログを再掲して欲しいとの要請があり、今回、この井口さんの兜太論の紹介文を、まずお目にかけたいと思った。 以下がその内容である。...
ふらんす堂の「現代俳句文庫88」、2023年4月21日、発行。氏は「俳壇賞」の受賞者で、「出航」(森岡正作主宰)の同人。解説は杉山久子氏と仲寒蝉氏。帯には〈白猫のまばたきのごと梅ひらく〉が抜かれている。収録句集は、『猫』『砂糖壺』『冬夕焼』『乗船券』『音符』そして第六句集『...
米岡さんが個人誌「ひ」を創刊された(2023年5月1日)。氏は守口市の人で、幅広く表現活動に従事されている。該誌は、俳句に特化されたもので、全39頁の薄手の手軽なもの、との印象を外見から受けた。ところが中を開いて驚いた。細かい活字で、濃密な俳句情報がいっぱいである。...
佐藤さんは沼津の人。図書館勤務を終えて、富士の裾野で、夫婦で農業を楽しんでおられる。俳句は「惜春」(髙田風人子主宰)、「雛」(福神規子主宰)に学んでこられた。その第一句集で、二〇二三年五月一日発行。 序文は福神規子主宰が書かれ、本文の全句は、書家の成田真洞氏の揮毫によるユニ...
井出野氏は「知音」(行方克巳・西村和子共同代表)の同人で、二〇一五年には俳人協会新人賞を受けている実力者である。『孤島』は『驢馬つれて』につぐ第二句集で、二〇二三年五月一日、朔出版発行。 帯には〈虫の夜の孤島めきたる机かな〉と、西村和子代表の「宇宙的空想から共に生きる者たち...
山本さんは、北京の地縁で「北京俳句会」に入り、麻生明さんとの知遇を得たようだ。それで「海鳥」に投句するようになり、川辺幸一さんらが北京吟行にこられた縁で、さらに俳句に深くかかわるようになった。公認会計士として、中央監査法人に所属し、中国で活躍された。だから、この句集は、中国...
超一流企業の責任ある立場にあった高野公一氏が、俳句を能くし、芭蕉をはじめとする俳句評論家であることは良く知られている。そのエッセイ集である。当然、所々に俳句が鏤められている。 内容は、生い立ち(特に戦病死した父のこと)、例年夏をすごす清里での日常、ピースボートでの世界一周の...
仁平勝さんの第五句集(序数句集としては第四)で、ふらんす堂、二〇二三年三月三一日発行。句集名は『デルボーの人』とあり、 083 間をあけて立つデルボーの人涼し に因んでいる。 ポール・デルボーはベルギーの画家でシュールリアリズム派と言われている。その作品が表紙に使われていて...
頓所さんは「沖」に平成6年に参加、爾来、30年間、能村研三、林翔両氏の薫陶を受け、珊瑚賞を授与されている重鎮である。俳人協会幹事をも務めている。第一句集『冬の金魚』に続く第二句集で、2023年3月1日、ふらんす堂発行。帯文は能村主宰。主宰は〈来し方に返り点欲し黒海鼠〉のほか...
名和さんは「草の花」の主宰。昭和七年のお生れだから、今年で九十一歳となられる。その第五句集で、花の句はもちろん、旅吟と酒と忌日の句が多くみられる。氏ご自身はとてもお元気であられるようだが、一昨年、奥様を亡くされた。「胸部大動脈剝離」とあとがきにあるので、一瞬のことであったろ...
著者のマブソンさんは、フランス生まれで、現在、長野市在住の俳人。金子兜太に師事し、「海程」から「海原」同人。「俳句弾圧不忘の碑」の筆頭呼びかけ人。句集『空青すぎて』で第4回宗左近俳句大賞受賞。一茶の研究でも知られている。...
林さんは、俳歴によれば昭和51年に「沖」(能村研三主宰)に入会、その後20年ほど作句を中断されていたようだが、平成16年に復帰された。それ以前も以後も、ずっと「沖」一筋のようだ。その第二句集。2023年2月23日、ふらんす堂発行。 自選15句は次の通り。...
柴田さんは若くして詩に親しんでおられた。10年ほど前に「らん」(鳴戸奈菜発行人)にて俳句を始め、「港」(大牧広主宰)にも所属。詩人らしく、言葉に敏感な作品を収容している。文庫本の大きさの句集で300句ほど。齋藤愼爾さんの協力で成った句集である。2023年二月二十日、深夜叢書...
秦さんの第十九句集である。以前から秦さんの表現意欲の旺盛さには驚いていた。しかし今回はさらに驚いた。ふらんす堂からの送付案内には「去る一月二二日に秦夕美氏は御逝去されました」とあるではないか。見本の校正刷りを観て戴いたのが最後だったとのこと。謹んでお悔やみ申し上げます。ふら...